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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)6752号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(2) 逸失利益

同原告が残している後遺症の部位、程度(編注=自賠法施行令別表五級相当の左下腿切断後遺症)は当事者間に争いがなく、また<証拠>によれば、同原告は、本件事故により片足を失い、義足と杖とでこれを補つているが、このため従前取引のため屡々全国各地に出張していたが事故後はそれができなくなつたほか、執務上多大の不便をかこつていること、同原告自身、昭和四四年六月から従前の月当り給与三〇万円を一五万円に減額したことが認められるが、一方、同原告は、原告会社における実質上唯一の経営者であり、他の役員は報酬や給与の支給も受けない単なる名義上のものにすぎず、これらの役員に対する多少の遠慮はあるにしても、やはり自身の給与を自ら決定し得る地位にあることが認められる。

右認定のとおり、同原告は原告会社において企業経営者としての特殊の地位にあり、その職務の性質上、労務と賃金の関係が必ずしも一般労働者と同列には把握しえない関係にあるから、労働省昭和三二年七月二日基発第五五一号労働基準局長通牒に定める右後遺症相当の労働能力喪失率七九パーセントをそのまま同原告の将来の逸失利益算定の基礎とすることは明らかに失当であるし、自らの決定で減額した給与分も、同原告の前記のような右地位を考慮すると、これをそのまま本件事故に基づく相当な損害とするのもまた失当といわざるを得ない。

また、<証拠>によれば、原告日向は本件事故後自動車を購入し、原告会社においてその車庫を建設し、その運転手を雇用し、運転手の給料の一部は原告日向において負担していることが認められるが、これらの効用は単に原告日向の前記後遺障害を補うのに尽きるものではなくより積極的に原告会社の営業に寄与する部分もあるものと窺われる(原告本人も、運転手には会社の仕事もやらせている旨供述している。)から、これらの費用の全額を本件事故に基づく損害とみることはできないのみならず、このうちどの部分が本件事故と相当因果関係を有するかを確定するに足りる資料もない。

前認定のとおり、原告日向が右後遺障害により原告会社代表者としての執務に現に支障を来たしており、またそれを補うため相当の出費を余儀なくされていること自体はこれを肯認しうるのであるが、同原告の前記地位に鑑みれば、同原告が仕事に復帰した当初の支障、それに基づく労働能力の減退ないしそれを補うための出費が、そのまま将来にわたり継続するものとも思われず、そのためには本人の多大の労苦と周囲の者の協力援助を必要とするであろうが、次第に自己の身体状況に馴れ、それに応じた職務分担を定めることなどにより、漸時その程度は減ずるであろうことも推測するに難くない。

以上の事情ならびに後に認定するとおり原告会社の業務が事故後も順調に伸びていることに鑑み、同原告の後遺症に基づく労働能力喪失ないしそれを補うための出費による将来にわたる損害は、これを数量的に確定するに資料が不十分であつて、積極損害として肯認することはできないものといわざるを得ない。

ただ右のとおり、それによる損害の発生自体は肯認しうるのであり、将来においてそれを克服するための本人の労苦も多大であろうから、後記慰藉料の算定に当り右事由を十分に斟酌しなければならない。

(3) 慰藉料 五〇〇万円

以上の諸事情ことに傷害および後遺症の部位、程度、労働能力低下による損害ないしそれを克服するための労苦等諸般の事情を考慮すると、同原告の本件傷害による精神的苦痛を慰藉するため、右金額が相当である。(倉田卓次 浜崎恭生 鷺岡康雄)

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